製造業の原価構成比とは、製造原価(または売上高)のうち、材料費・労務費・経費がそれぞれ何%を占めているかを示す指標です。

経済産業省・総務省の「2025年経済構造実態調査(製造業事業所調査)」(令和8年(2026年)7月29日公表、2024年実績)では、製造業全体で製造品出荷額等に対する原材料・燃料・電力等の比率が64.5%、人件費が10.0%となっています。

ただし、この数字は自社の決算書とそのまま比べると誤読を招きます。

統計の分母は「製造品出荷額等」であり、自社の売上高や製造原価とは定義が違うからです。

本記事では、業種別の最新の目安を一次統計から示したうえで、架空の金属加工会社の数字を使い、自社の原価構成比を計算し、統計との差から「原価低減と価格転嫁のどちらを先に進めるか」を判断する手順を解説します。

目次 [ close ]
  1. 「うちの原価構成は普通なのか」現場でよく聞く3つの声
    1. 材料費が上がっているのに、どこまで効いているのか分からない
    2. 原価低減といわれても、材料・人・経費のどこから手を付けるべきか迷う
    3. ネットの「原価率は○%」と比べて、うちは高いのか低いのか判断できない
  2. 原価構成比の基本|3つの計算式と似た指標との違い
    1. 原価構成比の定義と計算式
    2. 原価率・労務費率・付加価値率との違い
    3. なぜ構成比を見ると打ち手が変わるのか
  3. 統計で見る製造業の原価構成の目安|業種別データ
    1. 製造業全体の目安は「材料等64.5%・人件費10.0%」
    2. 業種別の原価構成の目安
    3. 統計と自社を比べるときの3つの注意点
  4. 自社の原価構成比を計算する手順|架空の金属加工会社の例
    1. 手順:決算書から5つの数字を拾う
    2. 計算例:売上高3億円の金属加工会社
    3. 差の読み方:「高い=悪い」とは限らない
  5. 構成比から打ち手を決める|原価低減と価格転嫁の優先順位
    1. 構成比のタイプ別に見る最初の打ち手
    2. 削減インパクトを構成比×削減率で比べる
    3. 材料費が10%上がったときの必要な値上げ率を試算する
  6. 原価構成比の分析でよくある失敗と見直しのコツ
    1. 分母と科目の定義がそろっていない
    2. 一期分の数字だけで判断する
    3. 平均との差を「正解からのズレ」と受け取る
  7. まとめ|今日できる最初の一歩
    1. この記事のポイント
    2. 今日やること:直近3期分の構成比を一覧にする
    3. 次に読む:見積りと原価差異につなげる

「うちの原価構成は普通なのか」現場でよく聞く3つの声

原価構成比を調べる経営者や工場長の多くは、用語の意味よりも「自社の数字をどう評価すればよいか」に悩んでいます。

まずは、ご相談の場でよく耳にする声を3つ整理します。

材料費が上がっているのに、どこまで効いているのか分からない

「鋼材や樹脂の仕入価格が上がっているのは分かるが、利益がどれだけ削られているのか説明できない」という声は非常に多いものです。

材料費が原価の半分を占める会社と3割の会社では、同じ10%の値上がりでも利益への打撃がまったく違います。

自社の構成比を知らないままでは、値上げ交渉の根拠も作れません。

原価低減といわれても、材料・人・経費のどこから手を付けるべきか迷う

現場では「まず材料の歩留まりだ」「いや段取り時間の短縮だ」と意見が割れがちです。

構成比の大きい項目ほど、同じ削減率でも利益への効果が大きくなります。

優先順位は感覚ではなく、構成比と削減できる見込みの掛け算で決めるのが基本です。

ネットの「原価率は○%」と比べて、うちは高いのか低いのか判断できない

検索すると飲食店の原価率30%や、出典のはっきりしない製造業の平均値が並びます。

業種も、分母の定義も、対象期間もばらばらの数字では、比べる物差しになりません。

この記事では、出典・調査年・定義をそろえた数字だけを使います。

原価構成比の基本|3つの計算式と似た指標との違い

ここでは、原価構成比の定義と計算式を最小限に押さえます。

基礎は短く済ませ、後半の計算と判断に紙幅を使います。

原価構成比の定義と計算式

製造原価は、材料費(原材料・購入部品・外注加工費)、労務費(製造に携わる人の給与・賞与・法定福利費)、経費(減価償却費・光熱費・修繕費など)の3要素で構成されます。

原価構成比は、この3要素がそれぞれ全体に占める割合を指します。

原価構成比の計算式

材料費の構成比=材料費÷売上高×100

労務費の構成比=労務費÷売上高×100

経費の構成比=製造経費÷売上高×100

この記事では、統計との比較をしやすくするため、分母を「売上高(加工賃収入を含む)」にそろえる方法で解説します。

製造原価の合計を100%として内訳を見る方法もありますが、統計は出荷額ベースのため、売上高ベースのほうが比べやすくなります。

原価率・労務費率・付加価値率との違い

似た言葉が多いため、使い分けを表で整理します。

指標分母何が分かるか
原価構成比売上高(または製造原価)原価の中身の配分(材料・人・経費のどれが重いか)
原価率売上高売上のうち原価全体に消える割合(利益の残りやすさ)
労務費率売上高・製造原価など人の費用の重さ。分母の違いで数字が大きく変わる
付加価値率売上高売上のうち自社が生み出した価値の割合

原価率は「全体の重さ」、原価構成比は「中身の配分」を見る指標です。

利益が薄い理由を探すときは、原価率で異常に気づき、原価構成比で原因を特定する、という順番で使います。

労務費率の分母の違いについて詳しく知りたい方は、製造業の労務費率の目安|業種別・規模別の平均と自社の計算方法もおすすめです。

なぜ構成比を見ると打ち手が変わるのか

原価率が同じ90%でも、材料費中心の会社と労務費中心の会社では、利益改善の打ち手がまるで違います。

材料費中心なら仕入条件・歩留まり・価格転嫁、労務費中心なら標準時間・アワーレート・工程設計が主戦場になります。

構成比は、限られた経営資源をどこに投じるかを決めるための地図の役割を果たします。

統計で見る製造業の原価構成の目安|業種別データ

次に、自社と比べるための物差しとして、一次統計の業種別データを確認します。

数字は2025年経済構造実態調査(製造業事業所調査、令和8年(2026年)7月29日公表、2024年実績)の産業別統計表(全規模計)をもとに、製造品出荷額等を100としたときの割合を算出したものです。

製造業全体の目安は「材料等64.5%・人件費10.0%」

製造業計では、製造品出荷額等に対して原材料・燃料・電力等が64.5%、人件費が10.0%を占めます。

残りの25.5%が、減価償却費・その他の経費・利益などの合計にあたります。

つまり製造業は、出荷額の約3分の2が材料等に消える産業だと分かります。

業種別の原価構成の目安

業種によって、材料型か加工型かで構成は大きく異なります。

自社と同じ業種の行だけを見てください。

「その他」は、出荷額から原材料等と人件費を引いた残りで、経費や利益などの合計です。

業種原材料・燃料・電力等人件費その他(経費・利益等)
製造業計64.5%10.0%25.5%
食料品製造業63.1%10.7%26.2%
印刷・同関連業50.0%20.5%29.5%
プラスチック製品製造業58.0%13.8%28.2%
鉄鋼業79.8%5.9%14.3%
金属製品製造業57.0%15.5%27.5%
はん用機械器具製造業60.3%14.0%25.7%
生産用機械器具製造業60.3%14.1%25.6%
電気機械器具製造業61.8%12.5%25.7%
輸送用機械器具製造業71.7%8.0%20.3%

出典:2025年経済構造実態調査(製造業事業所調査)産業別統計表(全規模計)をもとに筆者算出。

鉄鋼業や輸送用機械のように材料の比重が高い業種では、人件費は5~8%台です。

一方、印刷や金属製品のように加工の手間が中心の業種では、人件費が15~20%台まで上がります。

業種で3倍以上の開きがあるため、他業種の平均との比較は意味を持ちません。

統計と自社を比べるときの3つの注意点

統計は便利な物差しですが、定義を合わせずに比べると判断を誤ります。

  • 分母の違い:統計は「製造品出荷額等」、自社の決算書は「売上高」です。商社的な取引や在庫の増減があると差が出ます。
  • 範囲の違い:統計の「原材料・燃料・電力等」には、燃料・電力や外注費に相当する項目も含まれます。自社の勘定科目と対応させて集計してください。
  • 平均の性質:統計は事業所の平均値です。上位企業と下位企業が混ざっているため、「平均より低ければ優秀」とは限りません。

統計は「自社の位置を知る目安」であり、合否の基準ではないことを押さえておきましょう。

自社の原価構成比を計算する手順|架空の金属加工会社の例

ここからが本題です。

決算書と製造原価報告書(なければ試算表)を手元に置き、順番に計算します。

手順:決算書から5つの数字を拾う

必要な数字は、売上高、材料費(外注加工費を含める)、労務費、製造経費、売上総利益の5つです。

勘定科目の振り分けは、次の表を目安にしてください。

区分含める主な科目注意点
材料費原材料費、購入部品費、外注加工費、消耗工具器具費の一部外注加工費は材料費側にまとめると統計と比べやすくなります
労務費賃金、賞与、法定福利費、退職給付費用(製造部門)営業・事務の人件費は販管費に入るため含めません
製造経費減価償却費、光熱費、修繕費、リース料、荷造運賃など製造間接費として配賦されている費用を拾います

計算例:売上高3億円の金属加工会社

架空の金属加工会社(従業者40名)の数字で計算します。

売上高は3億円(30,000万円)、売上総利益は3,300万円とします。

項目金額(万円)売上高比金属製品製造業の目安との差
材料費(購入部品を含む)11,40038.0%―
外注加工費3,60012.0%―
材料・外注の合計15,00050.0%57.0%に対して-7.0pt
労務費6,60022.0%15.5%に対して+6.5pt
製造経費5,10017.0%―
製造原価の合計26,70089.0%―
売上総利益3,30011.0%―
経費+売上総利益8,40028.0%27.5%に対して+0.5pt

材料・外注の比率は50.0%と目安より7.0ポイント低く、労務費は22.0%と6.5ポイント高い構成です。

経費と利益の合計は28.0%で、目安とほぼ同水準です。

差の読み方:「高い=悪い」とは限らない

労務費が目安より高いのは、材料を仕入れて売る型ではなく、手間をかけて加工する型の会社であることを示します。

問題は、その手間が見積りの単価に正しく乗っているかどうかです。

アワーレート(1時間あたりの人と設備の原価)が実態より低いまま見積もっていると、労務費が重い会社ほど利益が削られます。

原価計算の様式をそのまま使いたい方は、原価計算用のエクセルテンプレートのダウンロードページをご活用ください。

構成比から打ち手を決める|原価低減と価格転嫁の優先順位

構成比が計算できたら、次は「どこから動くか」を決めます。

構成比の大きい項目ほど、同じ努力で利益に効きます。

構成比のタイプ別に見る最初の打ち手

統計との差をもとに、自社のタイプを3つに分けて最初の一手を整理します。

タイプ構成比の特徴最初の打ち手
材料偏重型材料・外注が目安より高い仕入条件の見直し、歩留まりの把握、材料費上昇分の価格転嫁
労務偏重型労務費が目安より高い標準時間とアワーレートの見直し、見積単価への反映、賃上げ分の価格転嫁
経費偏重型製造経費が目安より高い稼働率の把握、設備投資の回収見直し、遊休設備の整理

いずれのタイプでも、原価低減だけで利益を守ろうとすると限界があります。

構成比が大きい項目の値上がりは、削減努力では吸収しきれないからです。

削減インパクトを構成比×削減率で比べる

先ほどの会社で、各項目を少し改善したときの利益への効果を比べます。

効果は「売上高比×改善率」で、売上総利益率が何ポイント上がるかを示します。

打ち手売上高比改善率の仮定利益率への効果
材料の歩留まり・仕入改善38.0%3%削減+1.14pt
外注加工費の見直し12.0%5%削減+0.60pt
労務費(段取り短縮など)22.0%5%削減+1.10pt
製造経費の削減17.0%5%削減+0.85pt
売価の引き上げ(他は不変)―1%値上げ約+0.9pt

材料の3%削減は現場の努力で難しいことも多く、削減率の仮定の置き方次第で順位は変わります。

それでも、構成比が最大の項目に最初に目を向ける理由が数字で確認できます。

なお、売価1%の引き上げは利益率を約0.9ポイント押し上げます。

1%の値上げは、構成比の小さい項目の5%削減に匹敵する効果があります。

材料費が10%上がったときの必要な値上げ率を試算する

構成比を使うと、値上げ交渉の根拠が電卓だけで作れます。

材料・外注(15,000万円)が10%上昇した場合を試算します。

項目上昇前上昇後(価格据え置き)必要な売価(利益率11%維持)
売上高(万円)30,00030,00031,685
製造原価(万円)26,70028,20028,200
売上総利益(万円)3,3001,8003,485
売上総利益率11.0%6.0%11.0%

材料等が原価に占める割合は50.0%のため、10%の値上がりは利益率を5.0ポイント押し下げ、11.0%が6.0%に半減します。

利益率11%を維持するには、売価を約5.6%引き上げる必要があります。

この試算を資料にまとめれば、「なぜこの値上げ率なのか」を取引先に説明できます。

原価構成比の分析でよくある失敗と見直しのコツ

構成比の分析は、やり方を誤ると誤った結論に至ります。

よくある失敗を3つ挙げます。

分母と科目の定義がそろっていない

外注加工費を労務費に入れたり、営業の人件費を労務費に混ぜたりすると、統計との差が正しく出ません。

先に科目の振り分けルールを決め、毎期同じルールで集計することが大切です。

一期分の数字だけで判断する

一期の決算は、在庫の増減や大口案件の有無でぶれます。

最低でも直近3期を並べ、構成比の推移で見るのが安全です。

材料比率が毎期上がっていれば、仕入値の上昇を売価に反映できていないサインです。

平均との差を「正解からのズレ」と受け取る

目安は平均であって、理想値ではありません。

自社の強みが加工の手間にあるなら、労務費比率が高いのはむしろ自然です。

大切なのは、その構成に見合った価格を取れているかどうかです。

自社で進めるのが難しい場合は、専門家に伴走してもらう選択肢もあります。原価の構成から製品別の採算を見える化したい方は、原価管理体制の構築支援もご覧ください。

まとめ|今日できる最初の一歩

原価構成比は、利益が薄い原因を特定し、打ち手の優先順位を決めるための地図です。

この記事のポイント

  • 製造業の目安は、製造品出荷額等に対し原材料・燃料・電力等が64.5%、人件費が10.0%(2025年経済構造実態調査、2024年実績)。
  • 業種で大きく異なるため、必ず自社と同じ業種の行で比べる。
  • 構成比は「売上高比」でそろえ、材料(外注含む)・労務費・経費・利益の4つに分ける。
  • 構成比が大きい項目ほど利益への効果が大きく、材料費の上昇は価格転嫁で吸収する発想も必要。

今日やること:直近3期分の構成比を一覧にする

まず直近の決算書から、材料・外注、労務費、製造経費、売上総利益の4つを売上高で割ってください。

電卓か表計算ソフトがあれば30分で終わります。

その数字を、本記事の業種別の目安と並べるところから始めましょう。

次に読む:見積りと原価差異につなげる

見積りの組み立てに興味がある方は、見積原価の出し方|含める費用の範囲と見積金額を組み立てる4ステップもおすすめです。

実績と計画のズレを分析したい方は、原価差異分析の始め方|材料費・労務費・製造間接費のズレを読み解く4ステップもおすすめです。

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筆者紹介

吉岡翼(中小企業診断士) 
付加価値創造ラボ主宰

中央大学法学部卒。独立系コンサルティングファームにて東証プライム上場企業から中小製造業の経営支援に従事。
独立後は、「人と企業の理想を、現実に変える力に」を理念に価格転嫁や生産性向上の支援に注力している。