限界利益率とは、売上高から変動費(材料費や外注加工費など、売上や生産量に比例して増減する費用)を差し引いた「限界利益」が、売上高に占める割合のことです。

中小企業庁「中小企業実態基本調査」(令和7年確報・令和6年度決算実績、令和8年(2026年)6月29日公表)の法人企業データから当サイトが簡易的に算出すると、製造業全体の限界利益率はおよそ46.8%です。

ただし業種による差は大きく、鉄鋼業は32.6%、輸送用機械器具製造業は39.9%、はん用機械器具製造業は53.7%と、20ポイント以上の開きがあります。

この記事では、業種別・規模別の目安を一覧で示したうえで、自社の限界利益率を計算する手順と、製品別・取引先別に分解して値決めや価格転嫁の優先順位に活かす方法を解説します。

決算書を手元に置きながら読み進めていただくと、記事を読み終えた時点で自社の数字を目安と並べて判断できる状態になります。

「限界利益率は何%あればいいのか」現場でよく聞く悩み

限界利益率の目安を知りたいという相談は、多くの場合「今の利益水準が妥当なのか分からない」という不安から始まります。

まずは、経営者や現場責任者が実際に抱えている悩みを整理し、目安と比べる前に押さえておくべき前提を確認します。

決算書の粗利率だけでは良し悪しが判断できない

「うちの粗利率は20%だが、これは高いのか低いのか」という声をよく耳にします。

製造業の決算書では、売上原価の中に工場で働く人の労務費や設備の減価償却費が含まれています。

そのため粗利率(売上総利益率)は、人を多く抱える会社ほど低く見え、外注を多く使う会社ほど高く見えるという、比較しにくい数字になっています。

「材料費がこれだけ上がったが、いくら値上げすべきか」「この注文を受けると利益が出るのか」といった判断には、粗利率ではなく限界利益率のほうが向いています。

「業界平均」と比べる前にそろえるべき前提

目安と比べるときに見落とされやすいのが、変動費の範囲を統計と自社でそろえることです。

ある会社では労務費を変動費に入れ、別の会社では固定費に入れているといった具合に、限界利益率は費用の分け方次第で10ポイント以上動きます。

また、自社の業種や加工形態(材料を大量に仕入れる素材加工型か、人と設備の時間が中心の受託加工型か)によって、目指すべき水準そのものが異なります。

次の章から、計算式と分け方のルールを確認したうえで、業種別の目安と比べていきます。

限界利益率とは|計算式と製造業での意味

ここでは限界利益率の定義と計算式を簡潔に確認します。

すでにご存じの方は、次章の「粗利率との違い」まで読み飛ばしていただいて構いません。

限界利益率の計算式

限界利益率は、次の2つの式で求めます。

項目計算式
限界利益売上高 − 変動費
限界利益率限界利益 ÷ 売上高 × 100(%)
変動費率変動費 ÷ 売上高 × 100(%)(=100% − 限界利益率)

たとえば売上高1億円、変動費5,500万円の会社であれば、限界利益は4,500万円、限界利益率は45%です。

限界利益率45%とは、「売上が100円増えるごとに、固定費の回収と利益に回せるお金が45円増える」という意味です。

限界利益率が高い・低いと何がわかるか

限界利益で固定費(人件費、減価償却費、家賃など、売上に関係なく発生する費用)をまかない、残った分が営業利益になります。

限界利益率が低いと、同じ固定費を回収するために、より多くの売上が必要になります。

言い換えれば、限界利益率の低さは、賃上げの原資や設備投資の余力、手元に残るキャッシュが小さい構造であることを示しています。

一方で、限界利益率が高くても固定費がそれ以上に重ければ赤字になるため、率だけでなく「限界利益の額が固定費を上回っているか」をセットで確認することが大切です。

限界利益率と粗利率・営業利益率の違い

限界利益率の目安を正しく読むには、よく似た利益率との違いを押さえておく必要があります。

特に製造業では、粗利率との取り違えが判断ミスにつながりやすいため、ここで整理しておきます。

3つの利益率の比較

3つの利益率は、売上高から「どこまでの費用を引くか」が異なります。

指標計算式売上高から引く費用主な使い道
限界利益率(売上高 − 変動費)÷ 売上高材料費・外注費など売上に比例する費用のみ値決め、受注判断、価格転嫁の優先順位、損益分岐点の計算
粗利率(売上総利益率)(売上高 − 売上原価)÷ 売上高材料費・外注費に加え、工場の労務費・減価償却費など製造原価のすべて決算書上の収益性の確認、同業他社との大まかな比較
営業利益率営業利益 ÷ 売上高売上原価と販売費及び一般管理費のすべて本業全体の稼ぐ力の評価、金融機関への説明

製品1つあたりの採算を見るときに限界利益を使うのは、粗利や営業利益には人件費などの固定費が配賦(各製品に割り振ること)されて含まれており、配賦の仕方次第で結果が変わってしまうためです。

限界利益と粗利の違いをさらに詳しく知りたい方は、【製造業】限界利益と売上総利益(粗利益)の違いとは?経営判断を狂わせない正しい計算方法と活用術もおすすめです。

製造業で粗利率が「低く見える」理由

中小企業実態基本調査で製造業(法人企業)の数字を見ると、粗利率は20.9%にとどまる一方、簡易的に算出した限界利益率は46.8%あります。

この差の大部分は、売上原価に含まれる労務費(売上高の12.2%)や減価償却費などの固定的な費用です。

卸売業や小売業では粗利率と限界利益率がほぼ一致しますが、製造業では20ポイント以上の差が出ます。

「粗利率20%なら薄利だ」と早合点せず、まずは限界利益率に置き換えて考えることが、製造業の利益構造を正しく理解する第一歩です。

粗利率・原価率の目安や計算方法については、中小製造業の利益率と原価率|目安と計算方法から収益改善への体系的ガイドで解説しています。

製造業の限界利益率の目安|業種別・規模別の平均

ここからは、公的統計をもとにした製造業の限界利益率の目安を紹介します。

中小企業実態基本調査では「限界利益率」そのものは公表されていないため、売上原価の内訳(商品仕入原価・材料費、外注費)を変動費とみなして当サイトで算出した参考値である点にご留意ください。

製造業全体と従業者規模別の水準

算出方法は「(売上高 − 商品仕入原価・材料費 − 外注費)÷ 売上高」です。

従業者規模(法人企業)簡易限界利益率粗利率営業利益率
製造業全体46.8%20.9%4.0%
5人以下46.8%30.0%2.2%
6~20人51.9%27.9%3.0%
21~50人47.6%22.2%3.5%
51人以上45.7%18.3%4.5%

出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報(令和6年度決算実績)「売上高及び営業費用 産業別・従業者規模別表」をもとに当サイト算出。

規模による限界利益率の差は数ポイントにとどまりますが、営業利益率は小規模ほど低くなっています。

これは、限界利益率は同程度でも、売上規模に対する固定費の重さが小規模企業ほど大きいことを示しています。

中小製造業全体としては、限界利益率45~50%がひとつの目安と考えてよいでしょう。

業種別の限界利益率の目安

業種別に見ると、材料費の比重によって限界利益率は大きく異なります。

業種(法人企業)簡易限界利益率材料費等の比率外注費の比率
鉄鋼業32.6%64.1%3.3%
輸送用機械器具製造業39.9%47.8%12.4%
ゴム製品製造業40.5%55.8%3.7%
非鉄金属製造業44.2%50.7%5.1%
電気機械器具製造業45.4%47.7%6.9%
電子部品・デバイス・電子回路製造業46.0%47.6%6.4%
食料品製造業47.4%51.3%1.3%
プラスチック製品製造業47.4%47.8%4.8%
化学工業48.0%49.8%2.2%
生産用機械器具製造業49.1%38.2%12.8%
窯業・土石製品製造業49.8%44.9%5.3%
金属製品製造業51.4%38.4%10.2%
印刷・同関連業52.4%28.9%18.7%
はん用機械器具製造業53.7%32.0%14.3%
業務用機械器具製造業54.2%38.6%7.2%

出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報(令和6年度決算実績)「売上高及び営業費用 産業中分類別表」をもとに当サイト算出。

材料を大量に仕入れて加工する素材型の業種(鉄鋼業など)は30%台、人と設備の時間で価値を生む加工・組立型の業種(金属製品、機械器具など)は50%前後という傾向が読み取れます。

同じ「金属加工」でも、材料支給で加工賃のみを受け取る受託加工が中心であれば、統計の平均よりも限界利益率はかなり高く出ます。

統計の数字を読むときの3つの注意点

統計の目安と自社を比べる際は、次の3点に注意してください。

  • 電力・燃料費や運賃は変動費に含めていない:統計では区分されていないため、実際の限界利益率はこの表より数ポイント低くなります(製造業の運賃荷造費は売上高の1.8%)。
  • 「材料費等」には商品仕入原価も含まれる:他社製品を仕入れて販売する比率が高い会社は、その分だけ限界利益率が低く出ます。
  • 平均値は「健全な水準」を意味しない:令和6年度は材料・エネルギー価格の高止まりが続いた時期であり、価格転嫁が追いついていない企業も平均に含まれています。

つまり、統計値は「自社が大きく外れていないか」を確認するための物差しであり、目標値そのものは次章で示す方法で自社の固定費から逆算するのが確実です。

自社の限界利益率を計算する3ステップ

目安が分かったところで、自社の限界利益率を実際に計算してみましょう。

決算書(損益計算書と製造原価報告書)があれば、半日ほどで計算できます。

ステップ1:費用を変動費と固定費に分ける

中小製造業では、「材料費と外注加工費を変動費、それ以外を固定費」と割り切って分けるのが実務的です。

精緻に分けようとすると作業が終わらず、肝心の製品別の採算がいつまでも見えないためです。

費目区分の目安迷いやすい点と考え方
材料費・購入部品費変動費支給材がある場合は金額に含めず、統計との比較時に注意する
外注加工費変動費設計の一部委託など、生産量に比例しない外注は固定費とする
電力・燃料費原則は固定費(稼働比例分を変動費としても可)設備の稼働時間に比例する割合が大きい業種(熱処理、鋳造など)は変動費に含めたほうが実態に近い
運賃・荷造費変動費販売費及び一般管理費に計上されていても、出荷量に比例するなら変動費とする
労務費(正社員)固定費残業代が繁閑で大きく動く場合でも、まずは固定費として扱う
消耗品費・工具費固定費切削工具など加工量に比例するものが大きい場合のみ変動費とする
減価償却費・地代家賃固定費―

ポイントは、一度決めた分け方を毎期変えないことです。

分け方を変えると限界利益率の推移が比較できなくなり、改善したのか悪化したのかが判断できなくなります。

ステップ2:変動損益計算書に組み替える

分類ができたら、損益計算書を「売上高 − 変動費 = 限界利益 − 固定費 = 営業利益」の形に組み替えます。

年商2億円の金属加工業A社を例に計算してみます。

区分金額売上高に対する比率
売上高2億円100%
変動費(材料費9,000万円+外注費2,000万円+電力の稼働比例分600万円+運賃400万円)1億2,000万円60%
限界利益8,000万円40%
固定費(人件費・減価償却費・家賃など)7,200万円36%
営業利益800万円4%

A社の限界利益率は40%で、金属製品製造業の目安(51.4%)より10ポイント以上低い水準です。

材料費の比率(45%)が業種平均(38.4%)より高いことから、材料価格の上昇分が販売価格に十分転嫁できていない可能性が見えてきます。

エクセルで材料費・労務費・製造間接費を整理しながら計算したい方は、製造業向けエクセル原価計算テンプレート(無料ダウンロード)をご活用ください。

ステップ3:「必要限界利益率」と比べて目標を決める

自社が目指すべき限界利益率は、統計の平均ではなく、自社の固定費と目標利益から逆算します。

計算項目計算式とA社の例
必要限界利益率(固定費 + 目標営業利益)÷ 売上高 =(7,200万円 + 1,000万円)÷ 2億円 = 41%
損益分岐点売上高固定費 ÷ 限界利益率 = 7,200万円 ÷ 40% = 1億8,000万円
安全余裕率(売上高 − 損益分岐点売上高)÷ 売上高 = 10%

A社の場合、営業利益1,000万円を確保するには限界利益率41%が必要で、現状との差は1ポイントです。

しかし、来期に賃上げで人件費が500万円増えると、必要限界利益率は43.5%に上がります。

売上が1割落ちれば赤字に転落する体質(安全余裕率10%)でもあるため、「目安との差」と「必要水準との差」の両方を把握しておくことが、値上げ幅を決める根拠になります。

損益分岐点の考え方や改善の進め方は、損益分岐点とは?計算方法から製造業の経営改善に活かす実践ステップまでで詳しく解説しています。

製品別・取引先別に分解して値決め・価格転嫁に活かす

全社の限界利益率が目安どおりでも、製品別・取引先別に分解すると、採算の悪い製品が混ざっていることがよくあります。

この章では、分解した限界利益率を値決めや受注判断、価格転嫁の優先順位にどう使うかを解説します。

製品別の限界利益率と「時間あたり限界利益」

製品別に限界利益率を出すと、設備や人の時間を多く使う製品の採算を見誤ることがあります。

そこで、限界利益を加工時間で割った「時間あたり限界利益」も並べて見るのが有効です。

製品限界利益率限界利益(月)加工時間(月)時間あたり限界利益
製品P(量産品)30%300万円400時間7,500円
製品Q(多品種少量品)55%220万円500時間4,400円
製品R(試作・特急品)60%180万円150時間12,000円
製品S(旧型の補修部品)−5%−10万円80時間−1,250円

限界利益率だけを見ると製品Qは優良製品に見えますが、時間あたりで見ると最も稼ぐ力が弱い製品です。

段取り替えや手直しに時間を取られている可能性が高く、値上げとあわせて標準時間(作業時間+工具交換や手待ちなどの余裕時間)の見直しが必要になります。

製品Sのように限界利益がマイナスの製品は、作れば作るほど赤字が増えるため、値上げか撤退の判断を急ぐべき対象です。

時間あたりのコストの考え方は、アワーレートとは?製造業の人件費・設備費から見積り単価を導く計算方法もおすすめです。

値上げの優先順位と交渉の進め方

限界利益を製品別・取引先別に見える化したら、価格転嫁は次の順で取り組みます。

  • 最優先:限界利益がマイナスの製品・取引先
  • 次点:材料費や賃金の上昇によって、今後マイナスや低水準に落ち込む見込みの製品・取引先
  • 製品数が多すぎる場合:製品グループ別や取引先別にまとめて計算してもよい

さらに、自社の優位性(品質、短納期対応、代替の効きにくさなど)の有無と、限界利益の高低を組み合わせると、交渉の進め方を振り分けられます。

自社の優位性限界利益が低い製品・取引先限界利益が高い製品・取引先
優位性あり根拠資料を整えて最優先で交渉する。成立の可能性が高い利益をさらに伸ばせる余地があり、計画的に交渉する
優位性なし一度に大幅な値上げは難しい。材料価格の推移など客観データを示し、段階的に協議を始める値上げ余地は小さい。品質・納期などで関係強化を優先する

交渉では、値上げの背景と根拠を丁寧に説明できるか、価格以外のメリット(不良率の低さ、配送頻度、ロット対応)を示せるかが、受け入れられるかどうかを大きく左右します。

限界利益分析で価格転嫁の優先順位を決める考え方は、なぜあの製品は売上が大きいのに利益が薄いのか?限界利益分析で見える価格転嫁の優先順位もあわせてご覧ください。

限界利益率の活用でよくある失敗3つ

限界利益率を導入した会社がつまずきやすいポイントを3つ紹介します。

1つ目は、「限界利益がプラスなら受注してよい」と単純化してしまうことです。

限界利益がプラスでも、繁忙期に時間あたり限界利益の低い注文で設備が埋まれば、より稼げる注文を断ることになり、全社の利益はかえって減ります。

2つ目は、重量や材料費をベースにした見積り(コストテーブル)を更新せずに使い続けることです。

軽量化した製品ほど加工に技術と時間がかかるのに、重量ベースでは安く見積もられてしまうといった例外が、限界利益率を静かに押し下げます。

3つ目は、営業・製造・購買がそれぞれ売上や生産量、仕入単価だけを追い、誰も利益に責任を持たない状態です。

製品別の限界利益を部門の共通言語にし、評価にも組み込むことで、はじめて改善が継続します。

製品別の限界利益を見える化する仕組みづくりを自社だけで進めるのが難しい場合は、専門家に伴走してもらう選択肢もあります。

進め方の一例は原価管理体制の構築支援のページでご紹介しています。

まとめ|目安との比較から次の一手を決める

最後に、この記事のポイントと、明日から取り組める最初の一歩を整理します。

この記事のポイント

  • 製造業(法人企業)の簡易限界利益率は約46.8%で、中小製造業全体では45~50%がひとつの目安です。
  • 業種差は大きく、素材型の鉄鋼業は32.6%、加工・組立型の機械器具製造業は50%前後です。
  • 中小製造業では「材料費+外注費=変動費、それ以外は固定費」と割り切って計算すると、継続的に管理しやすくなります。
  • 目標とすべき水準は、「(固定費+目標営業利益)÷売上高」で求める必要限界利益率で決めます。
  • 全社の数字だけでなく、製品別・取引先別、さらに時間あたり限界利益まで分解すると、値上げすべき対象が明確になります。

今日から始める最初の一歩

まずは直近の決算書から、売上高から材料費と外注費を差し引き、その額を売上高で割って、自社の限界利益率を一度計算してみてください。

その数字を業種別の目安と並べ、差が5ポイント以上あれば、材料比率や外注比率のどこに差があるのかを確認します。

次に、売上上位10製品(または上位10取引先)だけでも限界利益率を出してみると、価格転嫁の優先順位が具体的に見えてきます。

限界利益率は、一度計算して終わりではなく、毎月の推移を追うことで「値上げが効いているか」「材料高騰に追いつけているか」を判断する物差しになります。

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筆者紹介

吉岡翼(中小企業診断士) 
付加価値創造ラボ主宰

中央大学法学部卒。独立系コンサルティングファームにて東証プライム上場企業から中小製造業の経営支援に従事。
独立後は、「人と企業の理想を、現実に変える力に」を理念に価格転嫁や生産性向上の支援に注力している。